千葉大学附属図書館利用支援企画課利用支援企画グループの小林裕太さん、伊勢幸恵さん、利用支援企画課アカデミック・リンクグループの池尻亮子さんに、学修支援活動のオンライン化(ハイブリッド化)の取り組みについて伺いました。
伊勢幸恵さん(左)、小林裕太さん(中央)、池尻亮子さん(右)
Q: 千葉大学附属図書館の概要、アカデミック・リンク・センター(以下、ALC)との関係を教えてください。
小林: 附属図書館は3つのキャンパスにある3館で構成され、利用支援企画課、学術コンテンツ課の2課で業務にあたっています。ALCは教員組織で、その事務部門を図書館が担う位置づけとなり、ALCのプロジェクトに図書館の職員が参加して協働して業務を行っています。
伊勢: 各自が担当している図書館の業務と直接の関係はないこともありますが、基本的に全員何らかのプロジェクトに入っています。希望やバランスを考えて割り振られる形です。
池尻: 重視するのは継続性ですね。異動後も続けてプロジェクトに参加することも多いです。
Q: 学修支援活動のオンライン化(ハイブリッド化)の概要と現況をお伺いします。
小林: オンライン学習支援ポータル(以下、EYeL!)と研究支援ポータル(以下、EYRJ!)を軸に、元々対面だったものをハイブリッドにしました。提供手段はサービスによって異なり、例えばレファレンスはコロナ禍でメール受付に変えた後、対面が復活しても対面とメールが両方来ています。Google Meetもありますが、利用は多くないですね。
池尻: 外部の専門講師を招くAcademic English Consultationは2020年度にZoomに移行し、現在もZoomのみです。画面共有で論文を見ながらやり取りでき、場所も問わず相談できるので、一番やりやすいんです。他にPCサポートデスクもZoomにしましたが、今はオンライン相談は少ないですね。
伊勢: 大学院生が学習相談に乗る分野別学習相談は、2020年度は全てオンラインで実施していました。現在は対面で実施しつつオンラインでも受け付けていますが、来ている相談がほぼ全て対面なのでオンライン相談をどう続けていくかが課題です。
分野別学習相談(2023年7月)
Q: 事業始動のきっかけは?コロナ前からオンライン授業推進の準備をしていたとのご報告を見ましたが。
【参考】小林 裕太, オンライン学習支援ポータルの構築について, 『館灯』59・60 号, p. 22-30
小林: オンライン授業推進は大学全体の話になります。2019年はENGINEの流れで「全員留学」を行う直前の年で、留学中に単位が取得できないのでオンラインで受けられる授業を提供しようという流れがありました。国際未来教育基幹(学務部教育企画課)とALC(附属図書館)が共同で設置した「スマートオフィス*」がその担当で、共同でオンライン授業の準備をしている最中にコロナが蔓延したので、他大学よりはスムーズに準備できた感じです。ただ、図書館の相談サービスをオンライン化する話は2019年にはなかったので、図書館としての支援はコロナがきっかけですね。
池尻: スマートオフィスの事務室は図書館と同じ部屋で、日常的に一緒に生活している状態なので非常にやり取りも密ですし、オンライン授業の準備が図書館に対して連携の部分で生きてきたと思います。
* 現在は教員と学務部教育企画課の職員で構成されており、スマートラーニングセンターの運営や、教育システム基盤の構築・管理・運用、メディア授業の実施及び受講に係る教職員・学生からの質問に答えるサポート業務などを行っている。
Q: 開始時の状況、学生さんや先生の反応についてお伺いします。
小林: 学生が大学に来られない中、竹内比呂也館長(副学長、アカデミック・リンク・センター長)から「学生の学びを止めてはいけない、学びを手助けするコンテンツを提供するポータルサイトを作りましょう」という話が出て、3月末からALCの教員が検討を始め、大体1週間検討して残り1週間でサイトを構築し、公開しました。
事例報告にも書きましたが一から全部作ったのではなく、元々作ろうとしていたEYRJ!のデザインを流用したり、セミナーを撮った動画を編集したものや図書館講習会の資料をまとめて公開したりという感じでした。
サービスの継続に精一杯だったのもあって学生の感想を広く聞くような機会は少なく、2020年7月に開催したALPSセミナーのアンケートが一番大きな反応をいただいたものです。学外の方の意見も多いのですが。
伊勢: 2020年6月にスチューデント・アシスタント(以下、ALSA)にEYeL!を実際に使った感想や改善点を聞くインタビューを行いました。作りっぱなしにせず、学生の声を聞いて改善しようという意識があったんですよね。実際にその後で見せ方などが改善されています。
オンライン学習支援ポータル(トップページ)
Q: 構築や運営の体制についてお聞かせください。
小林: EYeL!の構築時は、コンテンツの検討は教員2名、サイトのデザインやシステムは私、図書館が得意とする文献検索などは今の利用支援企画グループが主に担当しました。今は構築と運用を教員1名、図書館のマネジメント層1名、係員・係長級の職員4名で行っています。2021年にEYRJ!も公開したので、両方をこの体制で構築・運用する感じです。
Q: コロナの影響が弱まった現在、利用状況や利用の傾向に変化はありますか?
伊勢: 分野別学習相談では、2019年度は年間約800件あった相談が2023年度は前期終了時点で100件程度と、コロナ禍のときよりは増えつつはありますが、まだコロナ禍以前には戻っていません。ニーズに合っていない面があるのか気にしつつ、対応を模索しています。
池尻: PCサポートデスクも同じ傾向ですが、2023年度は前期で131件あり、対面で質問する習慣が戻ってきた感じはします。10月からは時間外にも質問を受けられるように質問フォームを始めました。オンラインがニーズに合っていないことまでは読めているので、試してダメなら次をやろう、やってみて考えようという感じで運営しています。
Q: 新しいコンテンツとして何を出すかはどうやって決めているのですか?
小林: 学生を対象とした調査や学習環境に関するアンケートの結果、セミナーのアンケートなどを参考に学生のニーズに合わせて次のコンテンツを検討しています。今は英語論文系、ワークショップ系のセミナーの動画が一番多いです。後はEYRJ!構築のとき、院生に必要だろうという項目をバンと出したので、その中でまだできていないものを作ることもあります。ALSAが執筆した記事や、研究データ管理に関するものが主な新規コンテンツと考えています。
Q: サイトがログイン不要で見られるので大変参考になりますが、困ることはないですか?
小林: ログイン不要は大切なコンセプトだと思っています。最初、ポータルサイトはログインする場所に置きたいね、利用調査的にもその方がいいよね、という話がありました。でもEYeL!を公開するときに、ログインが必要だと誰も見ないよ、となって。広く見せる形にした結果、Google の検索結果に出るようになって、本学の学生も検索したら自然と我々のサイトを見るし、学外の方にも見られるようになったのかなと思います。ただ、統計を取得する手段がウェブサイトのアクセスログしかなく、アクセス件数が非常に多いことはわかってもその先を知る手段がないのが苦しいところです。
Q: 今後の運用の目標や課題をお聞かせください。
小林: EYeL!はユーザーの意見を拾い上げて大幅に使いやすいインターフェースに改善した方がよいかなと考えています。また突貫工事で公開し、出てきた要望をその都度実装した結果、私しかサイトをいじれない状態なので、安定的な運用のために職員全員がいじれるようにすることが必要だと思っています。あとはやはり継続的なコンテンツの更新・公開が課題と考えていて、ALSAに執筆を依頼するなど、コンテンツの継続性を高めようという動きがあります。
Q: オンライン学習支援に取り組みたいと思っている職員、取り組んでいる職員にアドバイスをお願いします!
小林: 失敗しようともやってみるのが大事かなと思います。一歩一歩とにかく手探りでもやってみる。その上でちゃんとフィードバックを受け取って改善していくのが重要かなと思っています。
池尻: ALSAが書いたものが千葉大学として正しいことを伝えているか学内で確認してもらうこともあるので、他部局との連携、図書館の中だけで頑張らず、他の人に助けを求めたり一緒に考えてもらうことも大事かなと思います。
伊勢: 図書館の中だけで頑張らないっていうのは本当にいろいろなことに共通していて、例えばメディア授業を受けられる席が図書館に足りないから増設しようと考える前に、学内にメディア授業を受けられる場所がないか調べて大学全体で機能が備わっているか考える、オンライン化の方法を考えるときに学内の他部署のやり方を調べて聞いてみる、他大学の事例を聞いてみるなど、ちょっと広い視野を持つと進んでいきやすいのかなと思います。
学修支援活動のオンライン化(ハイブリッド化)についてのお問い合わせ先
alc-info@chiba-u.jp(@を半角にして送信してください)
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「ビジョン2025重点領域2企画」担当者チーム
筑波大学学術情報部情報企画課 大和田 康代(取材・文責)
取材日:2023年11月22日(水)