東京学芸大学「未来の先生のためのラーニングコモンズ」

“学校教育現場が変わっていけば、未来の先生のために必要なモノも変わっていきます。”

“学生たちと一緒に、私たち図書館職員も成長していけるようなラーニングコモンズにできたらなと感じています。”

2021年度リニューアル、東京学芸大学附属図書館のラーニングコモンズに注目!!
教職関連の充実したコレクション。学生の活動に寄り添う什器のセレクション。学習サポータによるデジタル教科書の企画セッション。
全てが有機的に組み合わさった魅力的な空間です。

【参照】東京学芸大学附属図書館ウェブサイト > 新ラーニングコモンズが利用開始となりました

【参照】東京学芸大学附属図書館ウェブサイト > 附属図書館・教職大学院棟増築リニューアルオープン式典を挙行
 

同館を代表して3名の方がラーニングコモンズ整備の経緯や想いを語ってくださいました。

東京学芸大学附属図書館を代表して3名の方がラーニングコモンズ整備の経緯や想いを語ってくださいました
左 :東京学芸大学附属図書館学術情報課利用者サービス係 横山 美咲 様
中央:東京学芸大学附属図書館学術情報課利用者サービス係 小野 令耶 様
右 :東京学芸大学附属図書館学術情報課 課長 高橋 菜奈子 様

 

リニューアルのいきさつ:図書館職員が皆で力を合わせて

高橋: リニューアルには前段階がありまして、2015年に第一期の増改築を実施しました。今回のリニューアルは第二期の整備にあたります。第二期では、第一期に新設したラーニングコモンズの拡張も含め、図書館の常勤職員が全員参加で力を合わせ、ワーキンググループを組んで計画を進めていきました。

小野: 拡張前のラーニングコモンズは、利用が非常に多くて、座席が足りなくなるような状況だったんです。また、ここ数年、学生が集まるスペースが学内で減少していて、図書館にグループ学習の場を求める声が多くありました。そういったニーズを受けて、今回ラーニングコモンズを倍以上に拡張し、811㎡になりました。図書館の1階の65%ぐらいを占めています。

ラーニングコモンズ拡張により新設されたアクティブエリア
ラーニングコモンズ拡張により新設されたアクティブエリア

 

学生の活動シーン:未来の教員が「学び合い、教え合う」

小野: 教員養成系大学ですので、教職関連の授業での利用だったり、教育実習の準備としてグループワークや模擬授業といった用途で使われる学生が非常に多いです。学生が教科書をたくさん持ってきて比較検討しながら、教育実習を組み立てている様子も印象的です。当館のラーニングコモンズでは、そういった活動に合わせて、教科書コーナーや、附属学校の先生が教育実習に来る学生向けに推薦してくれた図書のコーナーだったり、あとは、デジタル教科書コーナーや電子黒板なども設置しています。教員を目指す学生、教育について学ぶ学生がさまざまな資料に触れながら、「学び合い、教え合う」空間にしてほしいという想いを込めています。

 

プランの組み直し:コロナ禍でのチャレンジ

高橋: 特徴的な出来事で言えば、新型コロナウイルスが、私達の計画に大きな影響を与えましたね。2019年に立てていた計画を2020年に実施しようという段階で流行が起こりましたので。

小野: そうですね。コロナ前はかなり座席数を多くしたプランでした。その後、3密回避という状況になったのに加え、オンライン授業を落ち着いて受講できるスペースを求める声が出てきたんです。そこで、座席数を減らし、その代わりに、個人ブースのような什器を導入しました。このブースはリニューアルオープンの前から運用を開始しまして、人気の座席となりました。当初の計画どおりのグループワークができる状態も維持しつつ、突発的な需要に応えて、個人ワークに特化した什器も導入するプランに、ギリギリで組み直したのが苦心した部分かなと思います。

オンライン授業に適した個人ブースのあるグループワークエリア
オンライン授業に適した個人ブースのあるグループワークエリア

 

デジタル教科書コーナーの新設:一番の担い手は図書館の学習サポータ

横山: デジタル教科書コーナーの新設に伴い、2022年度は、学習サポータがデジタル教科書に関するセミナーの企画に力を入れました。学習サポータは学部3~4年生の11名で構成しています。春学期は学習サポータもデジタル教科書に触ること自体が初めてだったので、デジタル教科書や電子黒板の基礎的な紹介がセミナーの主な内容でした。秋学期になると、基本的な説明は短くとどめ、グループワークを取り入れて、デジタル教科書のメリットとデメリットは何かとか、学習者用デジタル教科書はまだ進化できるんじゃないかとか、参加者に意見を出してもらう内容にしています。

高橋: 学校現場では、GIGAスクール構想によりICT環境の整備が進み、文部科学省は2024年度からデジタル教科書を導入する方針も固めています。本学では、以前からICTセンターでデジタル教科書を契約していました。今回、あらたに図書館内でも使える形で利用許諾を得て、ぜひセミナーを実施したいという図書館側の発案で、学習サポータにプロモーションの一番の担い手となってもらいました。

小野: 2022年度は、デジタル教科書セミナーを13回(出版社主催3回、学習サポータ主催10回)実施しています。ラーニングコモンズでのセミナーやイベントとしては、他にも、図書館職員が講師となるガイダンス類が48回、授業等での利用34回、各種のワークショップが9回と増えてきています。図書館総合展のオンライン見学会でも紹介したり、積極的にアピールしています。

【参照】東京学芸大学附属図書館ウェブサイト > デジタル教科書コーナーの設置およびデジタル教科書閲覧用PCの貸出について
 

最後にメッセージ:変化する、成長する

小野: 本学は教員養成系の大学です。学校教育現場が変わっていけば、未来の先生のために必要なモノも変わっていきます。ラーニングコモンズは、一度グループ学習用の什器を入れてしまえばそれで終わりというものではなく、未来の先生のために、チャンスを捉えて、使いやすい椅子や机を新たに整備しつつ、状況に合わせて変えて行ければと思っています。

横山: 私は学生時代、デジタル教科書を全く触ったことがなかったんですけれども、導入する際に学生と一緒に学んでいく経験ができてすごく嬉しいです。これからデジタル化がますます広がっていて、おそらく私よりも遥かに使える子たちが入ってくると思います。学生たちと一緒に、私たち図書館職員も成長していけるようなラーニングコモンズにできたらなと感じています。

高橋: 今、E-TOPIAという教員を目指す学芸大生のためのウェブサイトもリニューアル中です。デジタルとリアルの両方に学びの場を作っていきたいですね。


追記:2023年3月22日に E-TOPIAが公開されました。

【参照】東京学芸大学 > News > 「E-TOPIA:教員を目指す学芸大生のためのページ」を公開しました(附属図書館)

【参照】東京学芸大学附属図書館ウェブサイト > E-TOPIA:教員を目指す学芸大生のためのページ
 

 

東京学芸大学附属図書館ラーニングコモンズに関する担当窓口および連絡先:
利用者サービス係
libref@u-gakugei.ac.jp
(@を半角にして送信してください)
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「ビジョン2025重点領域2企画」担当者チーム
九州大学附属図書館 兵藤 健志(取材・文責)
取材日:2023年1月6日(金)