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- なぜ図書館は学術誌の購読をキャンセルするのですか?
ほとんどの
図書館は、逐次刊行物購読予算では本来必要なコストをまかなえない状態になりつつあります。
北米の研究図書館を例に取ると、逐次刊行物購読予算は1990年代を通じて平均で
年に7.9%増加しました。しかし、逐次刊行物価格の実際の上昇率は年に9.0%でした。
1.1%のギャップは小さいように思えますが、それが年を経て積み重なれば、ほとんどの
図書館の逐次刊行物購読タイトル数はかなり減ることになります。
- 問題はどの程度深刻なのですか?
システム上の問題が特に深刻です。
学術誌やその他の逐次刊行物は学術的知見を伝える主な媒体となっています。
世界中の学者・教員にとって、学術誌の入手は徐々に困難になっています。
この数年間で研究図書館は学術誌の購読タイトル数を6%近く減らしましたが、
これは1,000誌を上回る削減であり、もっと大きく減らした図書館もあります。
- 「6%」が深刻な数字とは思えないけど…
6%も減れば無視できない
ダメージが生じます。というのも、逐次刊行物の購読タイトル数をなるべく維持しようと
する図書館は他の予算を削るからです。たとえば、平均的な研究図書館における単行書の受入は、
逐次刊行物のコストアップを補うために26%削減されました。
- 図書館問題が常に逐次刊行物の問題とされるのはなぜですか?
多くの
図書館において、定期刊行物は経費に占める割合が大きいのです。平均的研究図書館が
学術誌の購読タイトル数を今のレベルのまま維持するためには、年に400万ドルを超える
コストを払わなければなりません。学術誌の価格が毎年上がるので、その分の数万ドルを
どこかから捻出する必要があります。したがって、学術誌価格にわずかでも予想を
上回る上昇があったり、上部機関からの援助が減ったりしただけでも大きな影響が
生じる恐れがあります。
- 私の購読する学術誌は十分に安いと思いますが…何が
問題なのですか?
ほとんどの学術誌の価格設定は、個人購読価格と
団体購読価格の2本立てになっています。したがって、団体扱いになる図書館は、
個人よりも遥かに高いコストを払っており、最高金額で言うと、1誌の購読に
16,000ドルも支払っているケースがあります。
- 図書館の費用負担を軽くしようと思い、購読する雑誌を読後に
寄付しようとするのですが、図書館は興味を示しません。なぜですか?
一部に
法律上の議論もありますが、図書館は団体購読価格を逃れようとする行為を慎むべきと
されてきたからです。また、図書館は基礎研究支援を寄贈書に頼ることに消極的です。
- すべての学術誌は既に電子化されていると聞いています。
それならば安くはならないのでしょうか? なぜ図書館は印刷版を所蔵して
いるのですか?
電子出版物は、やがては安くなるかもしれませんが、
まだ今のところはそうなってはいません。事実、割高な価格を図書館に提示する
出版者も多いのです。たとえば、学術誌の電子版は印刷版にセット売りされる場合が多いので、
図書館は電子版ユーザに与える利便性を無視できずに、欲しくもない印刷版まで
押し付けられる羽目になっています。
また、電子ジャーナルには長期に
わたる深刻な問題があります。なかでも、よく指摘される問題はアーカイブと保存です。
印刷版の学術誌や学術書であれば、紙の寿命が尽きるまで保管することができます。
概して電子版は、買うのではなく、借りて購読します。したがって、ハードウェアや
ソフトウェアが急速に変化するなかで電子ジャーナルをどのように保存するかなど
考える利用者はいません。さらに、電子出版物を嫌う学者・教員、印刷版に代わる
存在とは考えない学者・教員もいます。それでもなお、学術研究の電子出版には、
特に市場競争原理によりコストが下がるという大きな可能性があります。
- 団体購読価格も含めて高価でない雑誌もあるのに、どこに問題が
あるのですか?
法外に高率(年率10%を上回る)の値上げをする「類」の(
高額な)学術誌もあります。それらは概して科学・技術・医学(STM)分野の学術情報伝達の
主たる手段とされる学術誌です。このような学術誌の出版社は、往々にして営利企業です。
商業出版者が学術誌の営利性に目をつけたため、一部の社会科学の分野にまでSTM分野を
凌ぐ値上げの波が押し寄せています。年を追うごとに、これらの学術誌は図書館の購読予算を
ますます逼迫させています。
- 利益追求のどこが悪いのですか?
利益追求は当然のことです。
しかし、学者・教員は、学術誌出版の分野において、その経済面・価値観に根本的な変化が
生じていることを知る必要があります。簡単に言えば、学術誌は世界的に大きなビジネス
となったのです。このビジネスは研究成果を広く知らしめることができるという点で
学者・教員に大きなメリットをもたらすのですが、新たな、そして異質な側面も見せています。
それは長期の成長が期待できる魅力的な投資を求める株主のニーズです。
学術誌の価格設定の傾向を見れば、一部の出版者が利益を最優先していることに
気づくはずです。
- 一部の学術誌が他よりも高価なのは、その学術誌が良いからでは?
学者が投稿したくなるような学術誌だからではないですか?
コーネル大学と
ウィスコンシン大学で非常に念入りで包括的な二つの研究が行われましたが、
価格と価値の間に有意な相関関係は存在しないという結論が出されました。全体的に、
低価格の非営利学術誌は「商業出版者の発行する学術誌の価格の概ね1/4〜1/5の価格であり」、
「インパクトファクターと呼ばれている雑誌の引用回数を尺度に取れば費用効率に優れている」
ことがわかっています。
- 商業出版者と非営利出版者で価格が大きく異なるのは
なぜですか?
コーネル大学の研究によれば、コスト的に見て制作費がわずかに
異なる程度の違いしかありません。したがって、価格が大きく異なる主な原因は、
商業出版者が株主のために利益を追求するからであると思われます。
- 利益はどの程度ですか?
利益を明らかにするのは難しいのですが、
多くの学術誌の商業出版者40%程度までのマージンで営業しているようです。出版業界の
平均的なマージンは5%前後です。つまり、一部の商業出版者は、まるでヨットや宝石のような
贅沢品のような、あるいは、独占企業のような儲けを得ていることになります。
- 大学やその他上部組織が価格の上昇を補えないのは
なぜですか?
補えているところもあります。しかし、ほとんどは10%近い
予算増額をしても間に合わないのです。北米の平均的な研究図書館の1986年当時の
逐次刊行物の経費は200万ドルでしたが、現在は400万ドルに急騰しています。
これと同じ期間に、世界の学術誌のタイトル数は倍増を超えて増加しているのに
学術誌の平均受入率は約6%下がりました。この結果、図書館は購読すべき学術誌の
半分足らずしか受入できないのに、3倍を超える費用を拠出しています。
- 学術誌の価格は今後どうなるのでしょう?
1986年当時の
平均的な学術誌の価格が125ドルでしたから、単純に推計すると、2012年には
1,158ドルになる見込みです。逐次刊行物の購読タイトル数を現在のレベルのまま
維持するだけでも、現在の学術誌平均購読予算400万ドルは1428万ドルになってしまいます。
図書館の資金不足が今後も続き、学術誌の購読キャンセルを今後も対策のメインに
据えるのならば、予算内で折り合いをつけるには、今日までにキャンセルした学術誌に加えて、
もうあと25%をキャンセルしなければなりません。また、上部組織からの支援がわずかでも
減ってしまえば、キャンセル率は50%に向けて上昇するでしょう。
- 私は一個人の学者・教員にすぎませんが、その私に何ができる
のでしょう?
以下をご参照ください。実のところ、できることは
たくさんあるのです。
- 逐次刊行物の危機について、また、学術コミュニケーションの出来事に
ついて学習するために時間を割いてください。まずここから始めましょう。
- 普段購読する学術誌の価格設定について学んでください。
商業出版者の価格と非営利出版者の価格を比較してください。
- 図書館員に価格と費用効率についての調査を依頼してください。
- 法外な価格設定をしていると思われる学術誌宛には手紙を書き、
懸念を表明してください。サンプルレター
- 学術誌に投稿する前に価格設定を調査してください。できれば、
妥当な価格設定をしてきた学術誌から著作を発表してください。
- 学術誌の編集委員会に席を置いているのなら、価格設定の問題を提起して、
価格設定とその履歴についての事実関係を把握してください。編集委員を務める学術誌の
収支明細、すなわち、管理費はいくらか、利益はいくらかを尋ねてください。
掲載する学術情報に見合った価格設定方針を採用するように呼び掛けてください。
契約上可能であれば、非営利出版者への乗り換えや、新たな学術誌の創刊を検討してください。
- 学部の同僚、学会の仲間と、問題点について議論してください。
学術誌の危機を、共同して悪化から守ろうとするとき、何ができるでしょうか?
- 仲間が行動を起こしているのならそれに学んでください (詳細はこちら)
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