回答が難しい10の質問 | ||||||
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提唱活動(Advocacy)は楽しい意見交換の場となることがよくありますが、 学者・教員は、自分たちにとって非常に重要な学術コミュニケーションなどについて、 難しい質問をすることがあります。ここでは、そうした質問例を10取り上げ、簡単な解説と 考えられる回答を記します。提唱活動に備える場合には、これよりさらに難しい質問が 出るものと覚悟しておいてください。なぜそのような質問が出されるのかを考え、 自分なりに回答を用意しておくようにしてください。
この質問はどこから来るか: 学者・教員の多くは (特に自分の専門分野に長くいた人たち)、学術コミュニケーションの危機をあまり 感じていません。彼らの仕事は研究であって、学術的な出版システムの分析ではないからです。 現在のシステムにおいて終身在職権を獲得し、昇進を果たしてきた人たちのなかには、 あなたが変化について話すのを疎ましく思う人もいるでしょう。 考えられる回答:現在のシステムは機能不全に 陥っています。学術コミュニケーションをできる限り広く普及させるという本来の目的を 達成できていないからです。たしかに、1980年代半ばと比べてみると学術的な情報の量は 倍増していますが、それにもかかわらず研究情報にアクセスするのは難しくなっています。 このまま手をこまねいていればこの状態はますますひどくなり、2015年には、図書館の 学術誌のコレクションは20~50%も減ってしまうでしょう。
この質問はどこから来るか:学者・教員の多くは (特に自然科学分野や社会科学分野の人たち)、説明だけではなくデータを欲しがります。 図書館員が解釈したデータではなく、生のデータです。 考えられる回答:WebサイトCREATE CHANGE に閲覧できる データがあります。ウィスコンシン大学とコーネル大学では、学術誌の購読料に関する調査を 実施しており、そのデータを見ることができます。ウィスコンシン大学では費用対効果の 分析もおこなっており、これもWebサイトに掲載されています。こうしたデータを見れば、 明らかに危機的状況であること、また速やかに行動しなければ状況がさらに悪化する ことがわかります。
この質問はどこから来るか:学者・教員のなかには、 慢性的な問題はいつのまにか消えてしまうものと思っている人たちもいます。 この危機を経済的に捉えることができないのです。しかし、商業出版による学術情報の コストは2桁の規模の価格上昇を記録しているため、大学の予算ではこれをまかなうことが できません。 考えられる回答:図書館資料の価格上昇に対処できる 大学等はごくわずかです。多くははできません。図書館資料の購入経費は莫大な金額になります。 学術誌と単行書に関する北米の研究図書館の1999年の平均的な予算は、650万ドルでした。 これは、1986年と比べて購買力が大きく減少したことを意味します。このままの状態で 価格上昇が続けば、2015年には、1999年のレベルを維持するために必要となる予算は、 学術誌の購読料だけをとっても1628万ドルにのぼると推定されます。 この危機を解決するために資金を投入し続けることは不可能でしょう。 このため、一部の大学や学者・教員は、商業出版者が支配権を握っている現在のシステムに 代わるものを模索しています。
この質問はどこから来るか:人文科学や社会科学の 学者・教員のなかには、過去数年間に学術誌の購読料が大きく上昇したのは、自然科学と 一部の社会科学の分野であることに気づいている人もいるようです。 考えられる回答:図書館では、大学のすべての学部を 等しく支援することを目標としています。また、学者・教員たちの側でも、これは一部の 学問分野の問題ではなく学術コミュニケーション全体の問題であると捉える必要があります。 学術誌の価格高騰問題は、私たちが考えているより速く人文科学の分野にも広がって いくでしょう。
この質問はどこから来るか:出版者と図書館員の両方に 友人のいる学者・教員のなかには、両方の板ばさみになって友情にひびが入るのではないかと 心配している人もいます。こうした人たちも、この複雑な問題を一気に解消できる解決策を 求めているようです。 考えられる回答:多くの出版者と図書館員はよい関係を 築いており、学術出版社の多くは、学者・教員や図書館員の価値観を尊重しています。 すなわち、重要なのは学術研究を広めることだと考えているのです。しかし、出版者のなかには 莫大な利益を上げて国際的な大企業になっているものもあります。こうした出版者にとっては、 利益を上げることが最大の関心事なのです。
この質問はどこから来るか: 一部の教員は、同僚や学会 との間で優れたリンクを築いており、必要なデータはすべて入手することができます。 こうした人たちは、ほかの大学の学生や同僚が直面している問題に気づいていないようです。 考えられる回答:あなたは、今でも必要なものはすべて 入手できる幸運な学者・教員の一人なのでしょう。しかし、あなたの学生は、 あなたとは違う経験をしていませんか。何か困ったことがあると言っていませんか。 ほかの大学の学者・教員(特に北米以外の地域)のなかには、この危機を肌で感じている人 もいるでしょう。この危機をできる限り広い視野に立って捉えることは、すべての 学者・教員の利益につながります。
この質問はどこから来るか:学者・教員のなかには、 編集委員を辞任したり、審査員になるのを断ったりするなどCREATE CHANGE が提唱している 過激な行動に出ると、自分や学生のキャリアが損なわれるのではないかと心配している人 もいます。こうした未知のものに対する恐れが、現在のシステムを維持する一因になって いるのです。 考えられる回答:ご心配はよくわかりますが、 無理をしないで自分にできることをすれば良いのです。たとえば、大学の同僚たちと 一緒に知的所有権の管理方法を変えようとする取り組みは、貴重な貢献になるでしょう。 また、昇進や終身雇用の審査に電子出版という要因を組み込んではどうかという議論に 参加することも、この問題を解決するのに役立つひとつの方法でしょう。
この質問はどこから来るか:学者・教員の多くは、 商業出版社の編集者や発行者との間で良好な関係を築いています。審査活動を拒否するなどの 行動を取ることは、裏切り行為のように受け止められることもあります。 考えられる回答:これまでの良好な関係を壊す必要など ありません。こうした関係を壊さないでCREATE CHANGE に参加する方法は ないものでしょうか。たとえば、出版社の友人に詳しい情報を求めたり、価格や利益についての 率直な話し合いに加わったりしてもらうことはできないでしょうか。
この質問はどこから来るか:人はまず国内のことを考え、 それから世界に目を向けます。しかし、この学者・教員は国内の状況すら眼中になく、 大学などからの支援が減ったり、学術誌の購読料がさらに急激に上昇したりすれば、 状況がどれほど厳しいものになるかが、わかっていないようです。 考えられる回答: 私たちが集めた国内のデータは、 世界中の学者・教員が経験しているのと同じような問題が米国でも起きようとしていることを示唆 しています[学術誌の解約や単行書の減少に関する国内データは、近日中に発表される予定です]。
この質問はどこから来るか:教員の多くはこれが深刻 かつシステム全体の問題であることはわかっていても、具体的に何をしたらよいかは わかっていません。ですから、次のような提言をしてはどうでしょうか。 考えられる回答:あなたにできることはたくさんあります。 CREATE CHANGE 、次の三つのカテゴリーにおける行動を提唱しています。すなわち、 (1)問題をよりよく理解すること、(2)大学や学協会での協議に参加すること、 および(3)学術情報の普及を妨げるような方針を掲げている学術誌への投稿や、そうした学術誌の ための審査活動を拒否する手紙を送りつけることをはじめとした直接的な行動を起こすこと。 CREATE CHANGEの教員向けWeb Siteでは、役に立つさまざまなアイデアや テンプレートを用意しています。
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