FAQ:学術コミュニケーション
の危機 | ||||||
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1. 学術コミュニケーションの危機について簡単に解説してください。 3. 電子版によって、学術コミュニケーションの方法が変化しようとしているのではありませんか。 6. 研究・教育活動を支援するのは、大学の義務なのではありませんか。 7. この危機に対処するためには、受入資料を減らし続けること以外に、 どのようなことがおこなわれていますか。 8. 私は一介の図書館員です。私は何をすればいいのでしょうか
説明:
2. この危機はどの程度深刻なものですか。 これは深刻な危機ですが、進み方はゆっくりとしています。ほとんどの図書館では、 図書の購入予算と購入価格との差がしだいに大きくなっています。北米の図書館の平均的な 学術誌の予算は年7.9%の割合で増えていますが、学術誌の購読料はこれを上回る年9%の 割合で上昇しています。 しかし、危機は学術誌だけに留まりません。1986年以来、北米の平均的な研究図書館では、 蔵書の1/6近い購買力が減少しました。これは、あらゆる媒体種類の学術コミュニケーションに 影響を及ぼしています。もっとも目立つのは学術誌の解約ですが、学術書などにも深刻な影響が 出ています。平均的な図書館では、単行書の受入件数が26%減少しました。 このままの状態で推移すると、学術誌の蔵書はゆっくりと減り続けますが、単行書の蔵書は それより速いペースで減少してゆくでしょう。 3. 電子出版によって、学術コミュニケーションの方法が変化しようとして いるのではありませんか。電子的コミュニケーションはコストが低く高速ですから、 これによって危機が解決されるのではありませんか。 電子出版は、かつてはコストが低かったのですが、今は違います。それどころか、 出版者にとって余計な支出になることもあり、そのしわ寄せが図書館に来ています。 学術誌の電子版は、印刷された学術誌と一体(セット売り)で販売されることが多いため、 結局は図書館が追加費用を支払うことになるからです。 また、電子ジャーナルには長期的な問題もあります。その最たるものはアーカイブと 保存です。印刷された学術誌を購読する場合は、その学術誌がある限り保存しておくこと ができます。一方、電子ジャーナルは所有方式ではなくリース方式の方が多くなっています。 つまり、誰がどのようにして電子ジャーナルを保存するのかという問題は、依然として 未解決のまま残されているのです。 4. 現在の危機はどうして生まれたのでしょうか。 学術情報の量は、過去40年の間に爆発的に増えました。1960年代に政府が高等教育の 予算を増やしたことがそのきっかけでした。1970年代になると、商業出版者が 学術コミュニケーションから利益を得ようとし始め、刊行物を民間企業に喜んで譲り渡す 学協会も多く出てきました。1980年代半ばを過ぎた頃、商業出版者は学術コミュニケーションの コストを次々と引き上げました。このため、図書館による学術誌の解約が相次ぎ、たくさんの 学術誌が廃刊に追い込まれました。 5. 危機はどこまで広がっているのでしょうか。 科学系−技術系−医学系の学術誌から始まった2桁台の価格上昇は、 今や雑誌依存型の社会科学分野にまで広がっています。図書館では、学術誌の購読料を 捻出するために、ほかの分野の受入資料を減らさざるを得なくなっています。一部の図書館では、 学術書、外国語文献、古書などが大きな影響を受けています。学術コミュニケーションが 今後どのように進展するかはまだわかりませんが、大まかな予想では、2015年までに 学術誌のコレクションが20〜50%減少するとしています。 6. 研究・教育活動を支援するのは、大学の義務なのではありませんか。 大学は、教員や学生が必要とする学術誌やその他の図書の購入資金を図書館に 提供できないのでしょうか。 図書館資料の価格上昇に対処できる大学などはごくわずかです。図書館資料の 購入資金は莫大な金額になります。学術誌と単行書に関する北米の研究図書館の1999年の 平均的な予算は、650万ドルでした。これは、1986年と比べて購買力が大きく減少したことを 意味します。このままの状態で価格上昇が続けば、2015年には、1999年のレベルを 維持するために必要となる予算は、学術誌誌の購読料だけをとっても1628万ドルに のぼると推定されます。 この危機を解決するために資金を投入し続けることは不可能でしょう。 このため、一部の大学や教員は、商業出版者が支配権を握っている現在のシステムに 代わるものを模索しています。 7. この危機に対処するためには、受入資料を減らし続けること以外に、 どのようなことがおこなわれていますか。 現在、学術コミュニケーションの現行システムに代わる各種のシステムについて 協議がおこなわれており、なかにはすでに実施されているものもあります。
8. 私は一介の図書館員です。私には何ができるでしょうか。 個々の図書館員は、学術コミュニケーションに変化をもたらすうえで 重要な役割を負っています。CREATE CHANGE の主な目的は、 学者・教員が学術コミュニケーションの主導権を取り戻せるようにすることです。 図書館員は、こうした問題について大学の教員と話し合う良い立場にいます。 最初のステップは、問題の本質をよく知ることです。私どもでは、 これに役立つwebサイトとしてCREATE CHANGE を設けています。問題が理解できたら、自分にできる範囲で 教員に情報を提供したり、学内で協議をおこなったり、あるいは具体的な行動を取ったり することができます。いくかのアイデアを以下に記します。
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